【2026/05/25】一日の市場を、流れで読む

この日の市場は、米国とイランの協議進展観測をきっかけに、原油安と株高が同時に進んだ。東京では日経平均が史上初めて6万5000円を突破し、欧州株も2カ月超ぶりの高値をつけた。米国株式市場はメモリアルデーで休場だったため、グローバルなリスク選好が本当に定着したかは、まだ確認待ちの部分が残る。
読みの中心は、「和平期待そのもの」ではなく、「和平期待が原油を下げ、インフレと金利への警戒をいったん軽くした」ことだ。株式はその改善を買った。一方で、米イラン双方は早期合意をけん制しており、ホルムズ海峡付近では原因不明の爆発音も報じられた。楽観は強まったが、合意なき期待に寄りかかっている面もある。
今日のサマリー
- 東京市場: 日経平均は前営業日比1819円12銭高の6万5158円19銭で終了し、取引時間中と終値ベースで史上最高値を更新した。
- 欧州市場: STOXX欧州600種は2カ月超ぶり高値。米イラン和平期待、原油安、AI関連の買いが支えた。ロンドン市場は休場。
- NY市場: 米株式市場はメモリアルデーで休場。外為と原油が主な観測対象となり、ドルは主要通貨に対して下落、原油先物は約7%下落した。
- クロスマーケットで目立ったテーマ: 米イラン協議期待、原油安、AI・半導体買い、日本・欧州株高、ドル円158円台。
- 明日に残った論点: 米市場再開後に株高と原油安が維持されるか、協議が具体化するか、薄商いの反動が出るか。
まず、一日の流れ

この図は、朝の慎重な見通しから、東京株の最高値更新、欧州株高、米休場下の商品・為替反応までをつないだものだ。方向感は「原油安が株式を支えた」で一貫しているが、米国株式市場が閉まっていたため、終盤の価格発見は限られた。
朝の段階では、東京株の上値は重いと見られていた。前週末までの2日間で日経平均が3534円上昇していたことに加え、米国市場が休場で積極的な売買が手控えられやすいとされた。この前提が重要だ。25日の上昇は、もともと楽観一色だった市場がそのまま上がったのではなく、朝の慎重さを原油安と和平期待が上書きした動きだった。
寄り付きから流れは変わった。日経平均は前営業日比319円88銭高の6万3658円95銭で始まり、すぐに初の6万4000円台へ進んだ。前場には6万5142円81銭まで上げ、前場中盤には6万5408円87銭の高値をつけた。
大引けでも勢いは保たれた。日経平均は前営業日比1819円12銭高の6万5158円19銭で終え、史上初めて6万5000円を突破した。この上昇には、米イラン和平合意への期待、原油先物価格の下落、AI・半導体関連への物色が重なった。
欧州時間には、同じ材料が欧州株にも波及した。欧州市場サマリーでは、STOXX欧州600種が2カ月超ぶりの高値で取引を終え、イラン紛争勃発以来の下げを全て取り戻した。銀行株が上げ、ブレント先物の下落を受けて航空関連株も買われた。ロンドン市場は休場だったが、欧州大陸側では「原油安は景気と企業収益にプラス」という読みが前面に出た。
NY時間は、米国株が休場だったため、外為と原油が市場の読みを示した。欧州外為市場ではドル指数が約0.3%下落し、ドル円は158.91円となった。米国時間の原油先物は約7%下落し、ブレントは96.30ドル、WTIは90.88ドルで清算した。
東京市場
東京市場の強さは、原油安とAI・半導体買いが重なった点にある。中東情勢の緊張緩和期待で、原油価格が下がり、投資家心理が改善した。さらに、AI関連の世界的な物色が続き、ソフトバンクグループや半導体関連銘柄が指数を押し上げた。
ただし、単純な全面高と見るより、指数寄与度の大きい銘柄に資金が集中した相場として読む方が実務的だ。大引け時点の市場報道では、ソフトバンクグループが連日大幅高となり、AI・半導体関連への物色が続いたとされている。日経平均が大きく上がったからといって、市場全体のリスク許容度が同じ幅で上がったとは限らない。
為替は、株式ほど一方向ではなかった。午後3時のドル円は158円後半で、香港と米英の市場休場もあり閑散取引だった。中東情勢への過度な警戒は和らいだが、FRBの利下げ観測後退がドルの下値を支え、ドル円の上値では介入警戒も意識された。
日本固有の政策材料も加わった。高市首相は3兆円強の補正予算を編成すると表明し、市中への国債発行総額を増やさずに対応できると説明した。株式には景気支援の安心感になり得るが、債券市場にとっては財源説明の信頼度が焦点になる。原油安で金利への警戒が和らいだ日に、財政の市場影響を抑える説明が重なったことも、東京市場の地合いを助けた。
欧州市場
欧州市場では、原油安の効き方がより直接的だった。エネルギー価格の上昇は、欧州にとってインフレ、消費、企業コスト、中央銀行の引き締めリスクを同時に悪化させる。25日はその逆方向の材料が出たため、株式市場は素直に反応した。
STOXX欧州600種は2カ月超ぶり高値となり、イラン紛争勃発以来の下げを全て取り戻した。銀行株が2%上昇し、ブレント先物が5%安の1バレル約98ドルとなったことで航空関連株も上げた。これは、原油安が単に商品市場の話ではなく、セクター・ローテーションの材料になったことを示す。
AI関連の買いも欧州株を支えた。ヘッジファンドは先週、ハイテク株を過去約3カ月で最も積極的に購入し、半導体関連を中心にAIからの恩恵を期待できる銘柄を買った。原油安がマクロ面の重さを軽くし、AI買いが成長テーマを補強した構図だ。
それでも、欧州のリスクは消えたわけではない。ECB理事会メンバーのストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、インフレ率が目標を一時的でも大幅に上回る場合、金融政策を慎重に引き締め方向へ調整すべきだと述べた。原油が再び反発すれば、欧州株の「原油安で買う」読みはすぐに試される。
NY市場
NY市場は、通常の意味での米株セッションがなかった。メモリアルデーで米株式市場は終日休場だったため、25日のグローバルなリスク選好は、米株の現物市場で確認されたものではない。これは、翌営業日に向けた大きな留保だ。
その代わりに、外為と原油が市場の温度を示した。ドルはホルムズ海峡再開への期待で軟化し、ドル指数は約0.3%下落した。ドル円は158.91円で、東京時間の158円後半から大きく離れなかった。中東リスクの緩和は有事のドル買いを弱めるが、FRBや米国の相対的なファンダメンタルズがドルを支えるという見方も残った。
原油の動きはさらに大きかった。ブレントは約7%安の96.30ドル、WTIは6.5%安の90.88ドルで清算した。ただ、この日は米祝日のため取引は低調だった。薄商いの中で価格が大きく動いた場合、翌日に流動性が戻ったときの確認が必要になる。
協議そのものにも不確実性がある。米イラン双方は早期合意期待をけん制し、ルビオ米国務長官は良い合意が得られるか、別の方法で対処することになるかのいずれかだと述べた。イラン側の交渉責任者はカタールを訪問し、ホルムズ海峡や高濃縮ウラン備蓄などを協議した。材料は前進方向だが、まだ合意そのものではない。
クロスマーケットで読む

この図は、米イラン協議期待から原油、インフレ、株式、為替、金利、財政へどう波及したかを整理したものだ。25日の相場は、単独のニュースではなく、複数資産が同じヘッドラインに反応した一日だった。
第一の経路は、米イラン協議期待から原油安、そして株式高への波及だ。ホルムズ海峡再開期待で原油が下がると、インフレ圧力と企業コストへの懸念が後退する。日本株と欧州株は、この「原油安が景気と収益にプラス」という読みを買った。
第二の経路は、AI・半導体買いだ。日本株では指数寄与度の大きいAI・半導体関連が相場を押し上げ、欧州でもAI関連の買いが支えになった。シンガポールのGDP改定値でもAI関連需要が成長に寄与しており、AIテーマは単なる株式物色ではなく、実体経済や輸出にもつながる補助線になっている。
第三の経路は、為替だ。ドルはホルムズ再開期待で軟化したが、ドル円は158円台後半から大きく崩れなかった。これは、有事のドル買いが一部巻き戻されても、FRBの利下げ観測後退や介入警戒、米国の相対的な金利水準が残っているためだ。
代替仮説として、25日の動きは「本格的なリスクオン」ではなく、「米休場の薄商いの中で、原油安ヘッドラインに株式と為替が短期反応しただけ」と見ることもできる。この読みが正しければ、米市場再開後に原油が戻し、株式の買いが大型AI銘柄にとどまり、ドルも再び底堅くなる。現時点では、原油安とAI買いが相場を支えたという主シナリオを置きつつ、流動性が戻った後の確認を重く見るべき局面だ。
明日の注目点

この図は、翌営業日に確認すべき4つの論点を並べたものだ。どれも、25日の株高が持続的な読みなのか、薄商いのヘッドライン反応なのかを分ける条件になる。
第一は、米イラン協議が具体化するかだ。ホルムズ海峡、停戦延長、高濃縮ウラン、凍結資金など、論点は複数ある。合意文書や実際の海運正常化に近づけば、原油安と株高の読みは補強される。反対に、発言だけで実務が進まなければ、期待先行の反動が出やすい。
第二は、原油の反発リスクだ。ブレントとWTIは大きく下げたが、米祝日の薄商いだった。米市場の流動性が戻った後も90ドル台前半から半ばで落ち着くのか、短期筋の巻き戻しで反発するのかを見たい。原油が戻れば、インフレ、金利、欧州株、航空株の読みも修正が必要になる。
第三は、AI・半導体買いの広がりだ。日本株では大型銘柄の寄与が大きかった。買いが半導体製造装置、メモリー、データセンター、電力、アジアの輸出関連へ広がるなら、相場の厚みは増す。大型株だけなら、指数は強くても地合いは脆い。
第四は、ドル円158円台後半から159円近辺の反応だ。中東リスクが後退すれば有事のドル買いは弱まるが、FRBの利下げ観測後退はドルを支える。介入警戒も上値を抑える。為替が安定すれば日本株の追い風になるが、急な円安や介入警戒の高まりは、リスク許容度を下げる。
先行きシナリオ
- 基本シナリオ: 米イラン協議は進展期待を保ち、原油は急反発を避ける。日本株と欧州株はAI・半導体と原油安を支えに底堅いが、米市場再開後の確認待ちで上値は選別的になる。
- 安心シナリオ: ホルムズ海峡再開や停戦延長で具体的な前進が見え、原油安が定着する。ドルはやや軟化し、株式の買いが大型AI銘柄以外へ広がる。
- ストレスシナリオ: 協議が停滞し、ホルムズ付近の不確実性が再燃する。原油が反発し、インフレ・金利懸念が戻り、日本株と欧州株の上昇が巻き戻される。
- 読み直しの条件: 原油が下がったままでも株式が伸びないなら、相場の制約は地政学ではなく、バリュエーション、利益期待、買いの偏りに移っている。原油が戻っても株式が崩れないなら、AI買いと景気支援期待が想定以上に強い。
Reader takeaway
25日の市場は、和平期待と原油安が日本・欧州株を押し上げた日だった。日経平均の6万5000円突破は強いシグナルだが、米株式市場が休場だったため、世界の投資家が同じ強気を確認したとはまだ言い切れない。
明日は、米市場再開後の原油、AI・半導体の買いの広がり、ドル円158円台後半、米イラン協議の具体化を順に見るとよい。合意そのものではなく、原油安がインフレと金利の警戒をどこまで下げるかが、この相場の持続力を決める。