【2026/06/26】一日の市場を、流れで読む

Market Daily cover

6月26日の市場は、AI相場が終わった日ではなく、AI相場の中身を選び直した日だった。世界株はテック売りに押され小幅安となり、SOXは5.3%下落、週次では7.7%安と2025年3月以来の大きな下げになった。前日まで市場を支えていたAI半導体の強さは残っているが、資金は「AIなら全部買う」から「誰が本当に利益に変えられるか」へ移った。

同時に、米金利とドルの重さは残った。Reuters pollではエコノミストの多数がFedの年内据え置きを見込む一方、市場は年内2回の利上げを一部織り込むというねじれがある。原油はホルムズ海峡の供給回復で下げたが、船舶攻撃と通航鈍化で安心は不完全だった。株式、為替、商品は一方向ではなく、リスク選好の中身が変わる一日だった。

今日のサマリー

まず、一日の流れ

Market timeline

この図は、東京のAI物色、欧州のテック売り、NYの世界株小幅安、ホルムズの安心と警戒を一つの流れで整理している。6月26日は、成長テーマが壊れたというより、強かったテーマの中で資金の置き場所が変わった日だった。

東京時間の出発点は、日本株のAI物色だった。日経平均の記録的な上昇では、SoftBank、Advantest、Tokyo Electronといった第一波から、Fujikura、Furukawa Electric、Murata、Taiyo YudenなどAIデータセンター関連部品へ物色が広がった。AIテーマがまだ続く一方、先行銘柄だけでは説明できない二段目の買いが起きている。

欧州に入ると、同じAIテーマが逆向きに作用した。STOXX 600は0.7%安となり、欧州テックは1.2%下落、InfineonとSTMicroelectronicsはそれぞれ4.5%下げた。前日までのAI期待をそのまま追うのではなく、過熱したテック株をいったん売る動きが強かった。

NY時間には、世界株が小幅安で終わった。Dowは0.09%安、S&P 500は0.05%安、Nasdaqは0.24%安と指数の下げは軽いが、SOXの下げは大きかった。ここで重要なのは、指数全体の崩れではなく、リーダーだった半導体が調整役になったことだ。

商品では、原油が供給安心で下げた。ホルムズ海峡では攻撃後に通航が鈍ったものの、複数の大型タンカーが湾岸へ入り、原油価格は供給懸念の緩和で3%超下落した。ただし、攻撃があった時点で地政学リスクは残る。市場は原油安を歓迎しながらも、供給正常化を完全には信じ切れなかった。

東京市場

東京市場では、AI物色の主役交代が焦点になった。日経平均の上昇は、AIへの期待だけでなく、AIデータセンターに必要な部品、電力制御、メモリ、光ファイバーといった周辺領域へ広がっている。MurataとTaiyo YudenのようなMLCC関連が注目されたことは、AIテーマが半導体製造装置から、サーバーを動かすインフラ部品へ拡散していることを示す。

この動きは強気材料であると同時に、相場の成熟を示す。第一波の銘柄が買われ尽くすと、市場は次の候補を探す。AIの需要そのものを疑っているのではなく、どの企業が最も収益に近いかを探している。だから日本株のAI物色は、単純なリスクオンというより、テーマ内ローテーションとして読む方がよい。

ただし、同じ日に世界の半導体株は売られた。東京でAI関連の裾野が広がっても、米欧のSOXやテックが調整しているなら、日経のAI物色も外部環境から切り離されない。日本の部品株が上がるほど、次に問われるのは受注、利益率、在庫、顧客の設備投資計画だ。

アジア時間には、ドル高の基調も背景にあった。ドルは2026年前半に3%上昇し、米金利上昇観測と米国資産需要が支えになっている。ドル高は米国資産への資金集中を示す一方、非米国市場や新興国には重くなりやすい。AIで日本株が強くても、為替と米金利の方向は無視できない。

欧州市場

欧州市場では、テック売りが指数を押し下げた。STOXX 600は前日の高値圏から下げ、テック株の弱さが目立った。Zalandoの会計調査という個別材料もあったが、より大きいのは、世界的なAI/半導体の利益確定が欧州にも波及したことだ。

欧州のテック売りは、米国の半導体調整と同じ構図を持つ。AI投資は長期テーマとして強いが、債務を使った大型投資、部品不足、価格転嫁、バリュエーションへの疑問が出ると、株価は一度足元の利益で評価し直される。欧州企業は米メガテックほどAIの直接収益を持たないため、装置や部品、産業電力の波及経路をより慎重に見られやすい。

一方、政策面ではやや安心材料もあった。ユーロ圏消費者の1年先インフレ期待は5月に4.0%から3.5%へ低下し、3年先と5年先はそれぞれ2.9%、2.4%で横ばいだった。これはECBが急いで追加利上げを迫られる圧力を和らげる。

ただし、期待インフレの低下だけでは株式の不安は消えない。テック売りの中心は、金融政策だけでなく、AI投資の費用、成長の質、資金流入の持続性にある。欧州時間の読みは、インフレ期待は少し落ち着いたが、株式市場は成長株の価格をまだ調整している、というものだった。

NY市場

NY市場では、指数の小幅安以上に、半導体とファンドフローの弱さが重要だった。世界株記事では、SOXが5.3%下げ、週次では7.7%安となった。これはAIテーマの否定ではなく、3月安値から大きく上昇したあとに、利益確定とバリュエーション点検が入った姿だ。

資金フローも同じ方向を示した。米株式ファンドからは週次で35.3億ドルが流出し、前週の376.3億ドル流入の一部を巻き戻した。テックセクターファンドは約200億ドルの流出となり、前週の214.6億ドル流入から反転した。価格だけでなく資金の向きも、テック過熱への警戒を示した。

Fedを巡る読みも市場の上値を抑えた。Reuters pollでは、Fedが年内据え置きと見るエコノミストが多数派だった。しかし、インフレは4%超で、Fedの目標の倍にある。しかも市場側には利上げ観測がある。次週の雇用統計で労働市場が強ければ、金利上昇とドル高が再び株式の重しになりやすい。

米国の信用力を巡るニュースは、リスク資産の底堅さも示した。S&Pは米国のAA+格付けを確認し、2026年から2029年にかけて米経済が約2%成長すると見込んだ。財政や政治の不確実性は残るが、米国資産への需要が簡単に崩れる材料ではなかった。だからドル高の背景には、金利だけでなく、米国資産そのものへの選好がある。

金はドル安で反発した。スポット金は1.3%高の1オンス4077.64ドル、8月限金先物は1.2%高の4096.30ドルで、PCE後にドルが緩んだことが支えになった。ただし、週次では4週連続安方向だった。金が上がったことは不安の増大というより、ドルと金利の一時的な緩みへの反応として読むべきだ。

クロスマーケットで読む

Cross market map

この図は、テック/AI、Fed、原油/ホルムズ、関税・貿易の四つが、株式、為替、金利、商品、信用へどう伝わったかを整理している。6月26日のポイントは、リスクオフではなく、リスク選好の中身が変わったことだ。

第一の経路は、AIから株式への流れだ。日本ではAI関連部品へ物色が広がった一方、米欧では半導体とテックが売られた。この二つは矛盾しない。AIの長期需要は残るが、短期の株価は上がり過ぎ、資本支出、決算確認、利益率の見直しに左右される。

第二の経路は、Fedからドルと金利への流れだ。Fedが据え置くというエコノミスト見通しは株式に安心材料だが、インフレ4%超と雇用統計待ちは、利上げ観測を完全には消さない。ドルは米国資産需要と金利期待で支えられ、新興国通貨や金には重くなりやすい。

第三の経路は、原油供給からインフレ期待への流れだ。Saudi AramcoはRas Tanuraで約4カ月ぶりに原油積み出しを再開し、各VLCCは最大200万バレルを積める。供給再開は原油安を通じてインフレ安心につながる。ただし、船舶攻撃があるなら、供給リスクは消えたのではなく、価格に織り込まれる度合いが下がっただけだ。

第四の経路は、関税と貿易だ。トランプ米大統領は、米企業にデジタルサービス税を課す国に対し、すべての対米輸出品へ100%関税を課すと警告した。これは企業収益、欧米交渉、インフレ期待を同時に揺らす材料になる。

米貿易赤字も見逃せない。5月の米財貿易赤字は14カ月ぶり高水準となり、中東戦争による不足や価格上昇を避けるため企業が輸入を増やしたことが背景とされた。さらにAI投資は輸入設備に依存するため、AIブームは成長材料であると同時に、貿易赤字と輸入コストを通じたマクロ材料にもなる。

明日の注目点

Watch points heatmap

この図は、次に見るべき材料を重要度順に並べている。6月26日の読み直し条件ははっきりしている。AI株の調整が押し目で終わるか、それとも金利・ドル・資金流出を伴う本格調整に広がるかだ。

最初の注目点は、米雇用統計とFed観測だ。次週の雇用統計が強ければ、利上げ観測が再燃しやすい。平均時給や失業率が想定以上に強い場合、株式には割引率上昇、ドルには支援、金には逆風になりやすい。逆に労働市場がほどよく冷えれば、テック調整は押し目として吸収されやすい。

二つ目は、SOXとAI株の戻り方だ。SOXの週次下落は大きいが、指数全体の下げはまだ小さい。半導体が持ち直し、決算やガイダンスでAI需要が確認されれば、6月26日は健全な調整だったと読める。戻れない場合は、資金フローの反転が相場の上値を抑える。

三つ目は、ホルムズ通航だ。供給再開と攻撃リスクが同時にあるため、原油は次のニュースに敏感だ。通航が安定し、Ras Tanuraの積み出しが続けば、原油安はインフレ安心として働く。攻撃や妨害が続けば、原油安の安心は短命になる。

四つ目は、ドル高の波及だ。ドルが米国例外主義とFed観測で上がるなら、新興国通貨、金、非米国株への圧力が出やすい。ポンドのように政治不安を受け流す通貨もあるが、最終的には米金利とドルの方向が主導しやすい。

五つ目は、関税と貿易赤字だ。デジタル税への100%関税警告は、まだ交渉材料の色が強いが、実行に近づけば欧州株、米IT企業、消費者物価へ波及する。貿易赤字の拡大も、AI投資の成長効果と輸入依存のコストを同時に示すため、米GDPや企業利益の見方を揺らす。

先行きシナリオ

Reader takeaway

6月26日は、AI相場が壊れた日ではない。むしろ、AIという大きなテーマの中で、投資家が銘柄、資金フロー、金利、原油、関税を同時に見直し始めた日だった。強いテーマほど、次の局面では「何を買うか」より「どこまで織り込んだか」が問われる。

明日の焦点は、AI株の押し目買いではなく、押し目買いを許す環境が残っているかだ。雇用統計、Fed観測、ドル、ホルムズ、関税。この五つが落ち着けば、調整は消化される。どれかが再び強く揺れれば、リスク選好の中身はさらに防御的になる。